エキストラ出演

  • 今仕事している会社の部署がとあるプロジェクトを受注し、その一環として企業向け啓発ドラマの製作を請け負っている。お隣の席の方がその担当者らしく、「シナリオが・・・」「オーディションが・・・」という会話を途切れ途切れに発するのを、好奇心を抑えながら耳にしていた。
  • 先週、グループのメンバーに送られたメールの件名にあったのが「エキストラ急募!」の文字。ある企業が不祥事を起こし謝罪の記者会見を開く、という設定なのだが、記者役のエキストラが足りないので来週水曜日に来られる人はぜひ来てください、とのこと。私ともう1人の派遣のSさんがその話に飛びついた。
  • 「記者らしく、ダーク系のスーツでお願いします」というリクエストに問題なし♪と思ってたら、正社員時代に着ていたスーツのスカート、かなりキツキツだった。ヤバかった(汗)。
  • スタジオ入りは9時45分。役者さんやスタッフの方はすでに揃っていた。簡単に自己紹介して、10時くらいから撮影開始。
  • 今日撮るシーンは、会社の社長と幹部3人が記者会見場に入場するところから。不祥事の経緯を説明し、記者の追及を受け言葉を失い、本当に申し訳ございませんでしたと頭を深々と下げて退場する、という流れ。最初に通しでやってみたときは5〜6分だった。
  • 今回は1台のカメラですべてのシーンを撮影する「映画方式」なのだとか。5〜6分のシーンが台本では30くらいにカット割りされ、カメラの位置にあわせてA〜Dまでの記号がふられている。最初にA、それからB、C...と続いていくので、撮る順番はバラバラ。
  • カメラから受ける画像を映すモニターを見ながら椅子やマイク、映る人の場所を調整し、セリフを入れてリハーサルして、そして本番。1つのカットは長くて10秒くらいから、長くて1分くらい。一つ一つのカットの移り栄えをよくするため、椅子の位置、マイクの位置を微妙にずらして調整される。1つのカットには前後のセリフも入るので、役者さんたちは何度も何度も同じセリフをしゃべることになる。撮り直しもある。体力と根気がいる仕事なんだなー、と痛感した。
  • 私は「報道」の腕章を左腕に着け、小道具としてメモ帳を渡された。カメラって、とても気になる。映ってても映ってなくても。午前中は全体的な風景を撮っていたので、私は椅子に座り、メモを撮ってるふり。
  • 監督が、会社側の役者さんには「もっと申し訳なさそうに。社長は基本的にいい人なんですから」とか、「部長役はもっとうなだれて」とか、台本以上にキャラクターづけをし、それに役者さんたちが反応していくのがとてもおもしろかった。一方、記者席側には「もっときつく、もっと険悪な雰囲気をつくってください」というリクエスト。言葉を詰まらせる企業側に呆れてため息をついたり、ヤジを飛ばしたり。
  • 午後からは、午前中に撮ったカットをさらに別角度から撮影。アップなどが多くなる。私も映ることがあり、ちょっとだけだけどメイクさんがファンデーションと口紅を直していただけ、心の中でニンマリ。今回はふりではなく、本当にメモ撮り。会見開始前のシーンでは、隣の役者さんと打ち合わせっぽく話してください、という注文に応えて「演技」もした。すぐにOKが出ちゃったのは残念だったような。もうちょっといろいろやってみたかったなー。
  • 現場は終始和やかな雰囲気だった。役者さんたち、特に冗談言って笑わせてくれたり、セリフ間違えておどけてみたり。それでも監督の声がかかると途端に神妙な表情に戻るのがおもしろいし素晴らしい。
  • すべてのシーンを撮りあえたのは、予定通り午後3時の少し前。約5分のシーンに4時間以上かかったことになる。お隣の席にいらした記者役の役者さんに「映像って緻密なんですねぇ」と感心して言ったら、「ええ。でもいつもこんな感じですよ」とのこと。これからドラマやタレントさんを見る目が変わりそう。
  • うちに帰ってからネットで調べてみたら、特に社長さん役の方は何度も大河ドラマや連続ドラマに出演されているベテランの俳優さんだった。どうりで雰囲気作りが上手だった。役に対しても、現場の雰囲気に対しても。
  • ずーっと内勤続きが続いてたから、とっても良い刺激と気分転換になった。楽しかった。完成品、ぜひ見てみたい。私が映ってるシーンで一番使われる可能性が高いのは、すべてのカットの後に撮った、メモをとる手だと思う。勘だけど。